あなたのメンタル不調は適応障害かもしれない…。

あなたのメンタル不調は

適応障害かもしれない…

会社に行きたくない、朝憂鬱で仕方が無い…という気持ちになることは、誰しも感じる事が多いかもしれません。
ただそういう気持ちに向き合わず放置しておくと、メンタルや身体のバランスが崩れ不調が長引く事もままあることです。
【適応障害】を良く理解し、日頃の生活に活かす事ができる、また場合によっては病院に行ってきちんと治療するという段階を見極めるなどの参考にしてください。

1.適応障害を知ろう
 1.1適応障害とは?
 1.2適応障害の診断基準
 1.3適応障害の原因は?
2.適応障害の症状とは?
  2.1精神面
 2.2身体面
 2.3行動面
 2.4うつ病との違いは?
3. 治療や取り組みについて
 3.1適切な服薬
 3.2環境調整
 3.3適応していく
4. 周りはどうサポートしたら良いか?
 4.1心構え
 4.2声かけ
5. ストレス耐性を身につけよう
 5.1ソーシャルサポート
 5.2ストレスコーピング
 5.3リラクゼーション・リラックス
自分のケアももちろんですが、職場や家庭で調子の悪そうな方がいたら、是非注意深く見て声かけしてみて欲しいです。

1.適応障害を知ろう

1.1適応障害とは…

日常生活の中で、何かのストレスが原因となって心身のバランスが崩れて社会生活に支障が生じたもの。原因が明確で、それに対して過剰な反応が起こった状態。ストレスの原因が明確であることが定義上重要(厚生労働省eヘルスネット)

と定義されています。わかりやすく記載されていますね。では診断基準はどうでしょうか?

1.2適応障害の診断基準…
適応障害の診断は医師(精神科医)が行います。
・ストレスを自覚してから3ヶ月以内に何かしらの症状が出る
・特定のストレス状態に置かれたときに、より強い症状が出る
・日常生活に影響を及ぼす
ICD-10(世界保健機構の診断ガイドライン)より抜粋しています。
私たちクリニックのカウンセラーは医師の診断の下、治療的カウンセリングに入ります。

1.3適応障害の原因は?…
これは人によって本当に様々です。例えば会社で言うと、
・同僚や上司・部下・取引先との人間関係
・仕事のミス
・営業成績
・昇進や異動
・クレーム
などなど。昇進は喜ばしいと感じる方もいれば、ものすごいプレッシャーに思い仕事に行くのが辛くて仕方が無い…という事もあるのです。
ストレスマグニチュードという尺度もありますので、ご覧下さい。

ライフイベントマグニチュード(点)ライフイベントマグニチュード(点)
配偶者の死100経済状態の悪化38
離婚73親友の死37
配偶者と別居65転職36
親族の死63夫婦喧嘩の増加35
刑務所やその他施設に拘束63150~200万以上の借金31
自分の怪我や病気53担保や貸付金の損失30
結婚50親戚とのトラブル29
失業47子供との別居29
配偶者と和解45職場での責任の変化29
退職45目立った個人的成功28
家族の健康・行動の変化44入学・卒業・退学26
妊娠40配偶者の就職や退職26
家族数の変化39生活状況の変化25
性的な問題39個人的習慣の変化25
会社の合併・倒産等39上司とのトラブル23

当てはまるストレス260点以上だと黄色信号、300点を超えると赤信号と言われており、精神的・肉体的な影響に現れる確率が高い状態です。知らず知らずストレスを抱えているかもしれません。

2.適応障害の症状とは?

では具体的にどんな症状が出てくるのかも見ていきましょう。
ただしこちらも人によって様々ですので、一例として見て下さいね。

では具体的にどんな症状が出てくるのかも見ていきましょう。
ただしこちらも人によって様々ですので、一例として見て下さいね。

2.1精神面…
・憂鬱な気分
・落ち込みや不快感
・焦り、緊張
・涙もろくなる、または理由もなく不意に涙が出てくる
・会社に行きたくない気持ちが強くなる
 などなど

2.2身体面
・吐き気、食欲不振、過食
・震え、冷え
・不眠(なかなか眠れない、早くに目が覚める、夜中何度も目が覚める)
・汗を大量にかく
・便秘や下痢
・体がだるい、重たい
・耳鳴りや頭痛…
など普段は無かった身体反応が現れてくることもありますし、弱い部位がいつも以上に悪化する場合もあります。

2.3行動面
 ・遅刻や無断欠勤
 ・無口や、無関心
 ・乱暴な行動、暴言を吐く
 ・喧嘩が増える
毎日1分遅刻とか、午前中休んで午後出勤、また当日急に欠勤なんて事が増えてきたら要注意です。きちんと会社に行きたいのだけれど行けない、または行きたくないという強い葛藤に苛まれている事も多いのです。

2.4うつ病との違いは?…

この表のように、明確に違うところはストレスの要因を除去すると改善するケースが多い事が特徴的です。
ではいよいよどういう治療法があるのか見ていきましょう。

3.治療や取り組みについて

3.1適切な服薬…
 適応障害への治療にとって薬は根本的な解決ではありません。辛い症状を緩和する対症療法です。
・抗不安薬:不安や緊張が強いとき
・抗うつ剤:抑うつが強いとき
・睡眠薬:眠れないとき
・漢方薬や気分安定剤:不安やイライラ、焦燥感が強いとき
に医師が適宜処方します。

3.2環境調整
 適応障害においてはこの環境調整が一番の肝になります。
ストレスと感じている要因を排除するという事です。例えば、
・仕事を休まない:上司や人事、産業医に相談し、勤務時間や職場の配置変更などで凌ぐ
・仕事を休む:鬱状態や不安が酷い時や勤怠が悪化している場合は休職も視野に入ります。
本人がどうしたいかという事も加味しつつ、休職するかしないかの判断に医師が繋げていきます。

3.3適応していく…
 同じ環境にあったとしても適応出来る人もいる中で、適応出来ない自分と向き合っていく事も大切です。ただし急性期ではなく、落ち着きを取り戻してから取り組む事になります。
ここはカウンセリングが有効です。例えば、
・リラックスする、落ち着きを取り戻す→起こったことを客観的に振り返る→自分の考え方の癖を知る→問題をはっきりさせる→今までの行動や考え方を手放したり変容していく
という過程を経て、適応していけるように支援していきます。

4.周りはどうサポートしたら良いか?

では実際、周りの家族や会社の同僚、お友達や恋人など周りの人たちは、どういう風にサポートしていけば良いのでしょうか?

4.1心構え…
 大前提として、適応障害は「適応する努力をした」けれども「適応出来なかった」時につけられる疾患です。
ありがちな「甘えている」「努力が足りない」「根性・気合いが足りない」という誤解はくれぐれも止めてください。
そして、価値観は人それぞれであることも理解してあげてください。

4.2声かけ…
 周りの方たちは是非、支持的・共感的に対応をお願いします。
 ・心配しすぎない
 ・原因追及しない
 ・ゆっくり休ませる
 ・本人の話に耳を傾ける
 ・じっと待ってあげる
ことがポイントになると思います。皆さんの協力もあり無事に回復してきたとしたら、次また同じ事が起こらないように、そして自分を大切にできるような取り組みをしていきましょう。

5.ストレス耐性を身につけよう

皆さんの協力もあり無事に回復してきたとしたら、次また同じ事が起こらないように、そして自分を大切にできるような取り組みをしていきましょう。

5.1ソーシャルサポート…
 友人知人・社内の人間関係やネットワーク作り、また公的・民間支援機関などの情報も整理して置くこともいざというときに役に立つかもしれません。

5.2ストレスコーピング…
 適切な認知行動というと難しく感じますが、自分が感じているストレスをきちんと自分でケアできるようにしておくことも大切です。大きく体調やメンタルを崩してから上げていくには時間もかかります。そうなる前に、少しの崩れを早めに対処できる力をつけていく事も得ていきましょう。

5.3リラクゼーション・リラックス…
 環境の悪さをそのまま受け入れてしまうのではなく、自分が働きやすい環境を作っていく事や、プライベートと仕事の線引きをしっかり行うことなども大切です。
そういったことも一緒に取り組んで行けるようにご支援させていただきます。

以上、適応障害とは何なのか?という部分をまとめてみました。

クリニックで私がカウンセリングを行っていたクライアントの乃樹愛さん(「なんで私が!?適応障害」の著者)が、「適応障害は私にとってギフトだった」という言葉を発せられていて驚きました。半年くらい苦しんでおられたと思いますが、「適応障害があったから今の自分に出会えた」と大変前向きで、しっかり整理がされている事に嬉しく思いましたし、クライアントは自分で立ち直る力があるという事を改めて感じさせてくれた一言でした。

今苦しんでおられる方もいらっしゃると思いますが、どうかご自分を責めずに、人生の休暇だと思い良くなる事を信じて過ごしていただきたいです。